阿部平助(1852~1938)
今治タオルの創始者。今治城下(現、今治市)出身。当初は、綿ネル(綿糸でつくった柔らかく軽い織物)業に従事していたが、泉州(現、大阪府)でタオルに着目し、手織りの織機を4台買い入れて、明治27(1894)年、越智郡風早(かざはや)町(現、今治市風早町)の民家を改造した工場でタオルの製造を始めた。この工場は翌年、火災で焼失してしまったが、事業の再建を目指した平助は親族に声をかけ、明治29(1896)年、阿部合名会社を設立した。 その後、30台のタオル織り機を導入して販路の拡大を試みたが、工員の技術が未熟で高品質のタオル生産が難しく、また、ぜいたく品として買う人が少なかったため採算がとれず、本業の綿ネル生産を主力とするため英国製動力織機50台を導入し、これにより愛媛県に工業の近代化をもたらした。タオルの製造は、大正5(1916)年にやむなく中止したが、生産量日本一を誇る今日の今治タオルの草分けとなった。