この世界には一本の大木がある。
それはどんな山よりも高く、僕の世界を包み込んでいた。
人はこれを神木と呼んで祀っていた。
花や草木はこの木の下で生い茂り、小鳥や虫や蝶々はこの木に集っていた。
人はこの木が落とす実を食べ、この木の根っこから湧き出す聖水で生活していた。
もちろん、そこには多種多様の動物がいる。
人と自然は、意識せずとも互いに支えあって生きていた。
僕はその大木の根元にある村に住んでいた。
そしてよく大木に作った秘密基地によく遊びに来ていた。
それは秘境だった。
風のそよ風も木漏れ日も、花や草木のささやきが心地よかった。
ある日、荒れてる土地を見かけたから、手入れをして、ブルースターの花を植えた。
小鳥も喜んでいた。
小鳥と一緒によく木のてっぺんで遊んだ。
そこでたくさんの小鳥たちとおしゃべりした。
ある日、木の中で新しい鳥の友達を探していると、枝の間から、人が落ちてきているのに気が付いた。
いや、落ちてきたというより、風に乗ってゆっくり沈んでいるようだった。
僕は両腕でしっかりとその子を受け止めた。
女の子だった。
彼女は、眩しそうに眼を開けた。
彼女から何か不思議な力のようなものを感じた。
彼女は僕に気が付くとすぐに起き上がって
「こんにちは」
と、元気いっぱいに言った。僕と彼女は、お話を始めた。しかし、その少女は僕のこと、村のこと、この大木のこと、全部知っていた!いろいろ話しているうちに、僕が最初に聞こうとしていたことを思い出した。「君は誰なの?」
(謎の親近感から聞くのを忘れていた)
その少女は、この大木の子供だという。
僕は驚いた。
でも、なぜか納得することができた。何かこの大木と同じものを感じるのだ。
この大木は、1万年に一度、人の姿をした種を落とし、次に生える場所を探すのだという。
そして、彼女の種は、僕の一番の友達の青い小鳥さんが、花にキスをしてくれてできたのだという。
しかもその枝は、僕がずっと昔に折れていたのを、治してあげたところだった。こうやって、少し人間のつながりを感じるところにこの種はできやすいのかもしれない。
その少女は、僕の先祖がもともと魔法使いであったことも教えてくれた。昔は魔法使いであふれていたらしい。でも、魔法使いがいなくなって、呪文を知る人がいなくなった。呪文を知らないと魔法を使うのは難しいらしい。特に自分が魔法の力を持っていると知らなかったらなおさらね。僕が小鳥と話せたのは、魔法使いに血を引いていたからだったのかもしれない。
そして、どうして魔法使いがいなくなったのかという言うことだけど、ある怪物が魔法使いをみんな燃やしては異にしてしまったんだ。それはドラゴンだ。この太古のドラゴンは強い魔力を持っていて、その魔力でずっとこの世界を支配しようとしていた。そんなドラゴンにとって、魔法使いは邪魔だったわけだ。みんな殺されてしまった。
「暗い話になっちゃってごめんね」
彼女は申し訳なさそうに言った。ぼくは全然気にしてないよと笑った。
せっかく人の姿になったんだから、どこか冒険しようよと僕は誘った。彼女はとてもはしゃいで喜んだ。
まず、一緒に花畑を走った。彼女はずっと種で、走ることができなかったから、これだけどもとても楽しそうだった。
冒険
いろいろな所へ旅に出て、そこでたくさんの動物と友達になった。魔法でどんな動物とも話せるようになったからね。
ある日、ある支配者がやってきた。その支配者は、てっとも強いから逆らってはいけないと言った。そいつは村を支配した。他の村からたくさんの人が来た。でも、木の下の世界を壊した。虫も小鳥も動物もいなくなった。
ある日、戦いが始まった。木の下の村は分裂してしまい、ある日、聖水の川を巡ってトラブルが起きて、火が付いたのだ。どうして平和にできないんだろう。
戦いが激しくなり、たくさんの犠牲者が出た。そんなとき、火の粉が大木に散って、火が付いた。
大木は見る見るうちに燃えた。それはものすごかった。まるで世界の終わりのようだった。大木は灰となって消え去った。
つまり、その少女にとって、偉大なお母さんが死んだのだ。それはそれは本当に深い悲しみだった。僕も涙が止まらなかった。彼女にとっても僕にとっても、この木は本当に大切なものだったのだ。彼女はずっと僕の言葉が聞こえていないようだった。
ここは生き物が済む場所ではなくなった。
もう誰もいない。
村のみんなは遠くの場所に移っていった。
でも僕と彼女はこっそりこの地に戻ってきた。
だって、この木、この地、この自然が大好きだったんだもの。
僕は、少女に、魔法を取り戻すためにはどうしたらいいかを聞いた。
なんやかんやして魔法の使い方を知る(ここ物語の長さを決めるポイント)
雲の様子がおかしいことに気が付いた。いや、これは雲ではなく、大木が燃えた時に出た煙だった。なんだか風が強くなってきた。
ずっと眺めていると、その煙ははもくもくと動き出し、ドラゴンになった。
とても大きなドラゴンだった。いよいよ風が強くなってきて、たっていられないほどになった。
するとそのドラゴンは炎を吐き出した!周りの物をどんどん焼いていった。
僕は、動物たちにドラゴンの討伐に協力するように言った。でも動物たちは僕を助けようとしなかった。なぜなら僕らと言う「人間」に自然を壊されたからだ。まずは謝罪が必要だった。この環境を壊してしまった人間の代表として。
動物たちを納得させるのは難しかった。でも時間が無いんだ!このままではこの世界は死の台地になってしまう。そして僕らは卑劣な人間とは違う!そういうと、何とか動物たちは僕たちの言うことがわかってくれた。
僕はついさっき習った魔法を使って全身全霊で戦った。少女は、今ある自然を避難させていた。さすが自然を動かすだけの大きな力を持っていた。
ライオンたちがドラゴンの足にかみついた。鳥たちがドラゴンの羽を喰いつばんでいった。
しかし、なんと無慈悲なことだろう、少女はドラゴンにつかまってしまった。そして、ドラゴンに消滅の呪いをかけられた。
僕は彼女との突然の別れに頭が真っ白になっていた。さよならも言えなかった。ああ、なんで、、、
涙であふれる目を拭って見上げてみると、彼女から何か神秘的な輝きが放たれていた。するとツタが生え、花が生え、見る見るうちに周りが緑化されて、木が生えた。すると急成長して大木となった。彼女はついに神木となったのだった。
すると、ドラゴンの煙をその大きな葉で吸収していた。ドラゴンはあらがった。しかし彼女は勝った。神木となって。
雲一つない空の下、野原一面にブルースターが咲いていた。
僕は今、彼女の中に建てた秘密基地でこのお話を書いている。